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【ナナメの夕暮れ】”生きづらさ”を少し軽くしてくれるのは、他の何でもない”生きづらさ”だった

こんにちは!sawa(@sawasan33333)です!

生きづらい人間だな。

めんどくさい人間だな。

ひねくれた人間だな。

お恥ずかしながら、自分に対してこう思って苦しくなる時があります。

でも苦しいのはこう思っているからじゃないんです、きっと。

ちょっとややこしいけど、苦しいのは、こう思っていることを明確に言語化できずにいるからだと思うんです。

「なんでめんどくさい人間なんだろう」
「なんでひねくれてるんだろう」

この”なんで”の部分がよくわからないから悶々とするし、ストンと気持ちが落ちない。

それを、ストン、どころか、ドスン、と落としてくれた本に出会いました。

オードリー・若林『ナナメの夕暮れ』

私はリトルトゥースだ。

リトルトゥースというのは”オードリーのオールナイトニッポン”のリスナーのこと

唯一聞いているラジオがこれで、ほぼ全ての回を聞いているほどどっぷりです。笑

リトルトゥースならわかると思う。オードリー・若林のめんどくささを。重度のひねくれ野郎であることを。”正”ではなく”負”の側の人間なのを。

そして、それをラジオで惜しみなく出す様がリスナーにとって快感であることを。

若林のトークは毒々しくて、ときには攻撃的で、かと思えばネチネチしてて、弱々しくもあって、それら全部ひっくるめて爽快でたまらない。

そんな若林の3冊目のエッセイ本が『ナナメの夕暮れ』だ。雑誌『ダ・ヴィンチ』での連載と書き下ろしエッセイの二本立て。

ラジオを聞いていると「あ、聞いたことあるくだりだな」という箇所がけっこうあるけれど、いつもは耳で聞いているのが文字に起こされてしっかり言語化されていることになぜか”安心感”を覚える。

そう。若林の負の部分は、安心するのだ。

ひねくれたフィルター越しに見ている世界を知っている人からすると「わー!そうそう!それよ!」と本を読みながらニヤリと顔が緩み、その直後に安心感でいっぱいになるのだ。

同じようにひねくれた人がいる。その人が、同じようなことを日々思っている!

こう思うとなんだか元気になるのだ。(負の同情でしかポジティブになれないのはご愛嬌)

スタバで「グランデ」と言えない

若林の有名なエピソードで、スタバで注文するときに「グランデ」と言えない、というのがある。過去のエッセイでも触れていて、今回も満を辞して登場した。笑

前作のエッセイで、スターバックスで注文の時に「グランデ」と言えないと書いた。
何か自分が気取っているような気がして、恥ずかしかったのである。
「L」は言えるのだが「グランデ」は言えない。
自意識過剰である。
自意識過剰であることに対して、「誰も見てないよ」と言う人がいるがそんなことは百も承知だ。
誰も見ていないのは知っているけど、自分が見ているのだ、と書いた。
”自分が見ている”とはどういうことかと言うと、「グランデとか言って気取っている自分が嫌だ」ということだ。

実は私もスタバで「トール」と言えない。

なぜ普段の生活で絶対に口にすることのない「トール」という言葉を使って注文する必要があるのか。「大きいサイズ」ではダメなのか。だいたい「Tall」はトールなのかタールなのか。わかりづらいったらない。

こういう気持ちはどこから来るかというと、「スターバックスでグランデとか言っちゃう系の人間だと思われることを気にしている自分」から来る。

この現象をド直球で若林が説明している。

こういう気持ちはどこから来るかというと、まず自分が他人に「スターバックスでグランデとか言っちゃって気取ってんじゃねぇよ」と心の中で散々バカにしてきたことが原因なのである。
他者に向かって剥いた牙が、ブーメランのように弧を描いて自分に突き刺さっている状態なのである。
昔から言っているのだが、他人の目を気にする人は”おとなしくて奥手な人”などでは絶対にない。
心の中で他人をバカにしまくっている、正真正銘のクソ野郎なのである。
その筆頭が、何を隠そう私である。

その通りだよ若ちゃん。笑

……私が普段から他人をバカにしまくっている、ってことではないので!笑

でも、スタバでグランデって言えなかったりトールって言えないのって要はこういうことなのだ。

できない自分への自己防衛が働くのだ。

他人に何かしらの難癖を見つけて攻撃することによって自分を肯定する。そうしないと、自分が攻撃されそうで怖くてしかたないのだ。

さすがだよ若ちゃん。直球ストレートで言葉にしてくれるじゃねぇか。爽快だぜ!

青年とおっさんの狭間は続く

若ちゃん初めてのエッセイ本『社会人大学人見知り学部 卒業見込』は中二病満載のネガティブっぷりが全開。

前作の『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』では少し大人な部分をちらつかせ、斎藤茂太賞を受賞!若ちゃんすごい!



3冊目の『ナナメの夕暮れ』では存分に負の部分を出しつつ、それを解決しようともがく様子が印象的だった。

そして、心のどこかで寂しかった。

あれ、若ちゃん、次のステップに進もうとしてる?まじ?嬉しいけど私まだそこまでいってないんだけど!置いてかないで若ちゃん!みたいな。

しかし。ラスト一行でその気持ちはぶっとんだ。ニヤリと顔が緩み、その直後に安心感でいっぱいになった。

そしてこう思った。

「おい若林、やってんなぁおぃ!!!!!」